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平川動物園ズーブログ

マサイキリン アヤメの思い出

みなさんこんにちは。

平川動物公園獣医師の伊藤綾夏と申します。平川動物公園で働き始めてから早5年が経ちましたが、初めてブログを書かせていただきます。

マサイキリン、アヤメが天国に旅立ってから、もうすぐ一か月が経とうとしています。

そして、もし生きていれば、今日はアヤメの25歳の誕生日でした。

生前のアヤメ

先月5月31日の朝7時頃、上司からの電話でアヤメの訃報を知りました。前日まで何事もなく、元気にしていたようだったので、突然のことにびっくりしつつも、急いで支度をして、動物園に向かいました。

動物園では、亡くなった動物たちは、全て解剖してその死因を調べ、さらにその遺体や臓器なども、今後の飼育や体のしくみの解明などの研究に役立てられます。もちろん大きなキリンであっても例外ではありません。とても大がかりな仕事になります。

アヤメの死を悲しみつつも、とても忙しい一日でした。(アヤメは特に体の中に大きな異常もなく、死因は老衰と考えられました。遺体は東京の国立科学博物館に引き取ってもらうこととなりました。)

慌ただしくアヤメとお別れをすることになってしまったのですが、その記録を残しておき、みなさんにも知っていただければと思います。

アヤメとの出会いは、私が初めて平川動物公園を訪れた7年前、まだ獣医学生だったころ、一般のお客さんとして、大人のための飼育体験教室に参加したときでした。

第一希望にキリンと書いて応募し、見事当選して、生まれて初めて、キリンの飼育体験をすることになったのです。わくわくした気持ちでキリン舎に足を踏み入れ、当時の飼育担当の方から初めて紹介されたのが、寝室にいたアヤメでした。とても優しい目をしていて、私たちの方を覗き込んできたのを覚えています。私が平川動物公園で初めて出会った動物は、マサイキリンのアヤメだったのです。

2015年2月 2年ぶりに再会したアヤメ

アヤメは、オスのハートほど人懐こく、グイグイと寄ってくるような個体ではありませんでしたが、声をかけるとこちらに寄ってきてくれるような個体でした。木の葉を食べながら、真上を向いて、音を立てながら反芻をしている様子が印象的でした。

そして何よりも、思い出深いことは、ハヤテとアヤトの出産です。特にハヤテのときは、平川動物公園でも7年ぶりのキリンの出産でした。

 

妊娠期間が1年以上(460日前後)にもおよぶキリンですが、アヤメは一生のうちに5頭の子を産みました。そのうち、私が働き始めてからの5年間の間に2頭もの子を残してくれました。さらにキリンは野生下で約15~20年、飼育下でも20~25年の寿命という、大型動物の中では比較的短命な動物なのですが、それを考えると、どちらもかなり高齢での出産でした。アヤメはとても上手に子育てをする個体で、ハヤテとアヤトを立派に育てました。

 

ハヤテの出産は2016年9月8日の昼過ぎのことでした。アフリカ園のゲート入口で出産していたという連絡を受け、職員総出で寝室の準備をし、子どもを運んで体を拭き、その後アヤメと一緒にしました。アヤメは子どものことをとても優しく気にかけており、起立を促し、授乳をしていました。

アフリカ園ゲート前で出産していたアヤメと生まれたばかりのハヤテ

ハヤテをなめるアヤメ

2度目の出産前は、アヤメの糞中のホルモンの測定結果から、妊娠はわかっていたため、飼育担当者は、いつ生まれてもいいように出産予定日の少し前の2月頃から寝室の準備をしていました。お腹も大きくなり、いつになるかと首を長くして待っていたのですが、2019年4月10日の夕方頃に、「生まれかけてる・・・・」と連絡をもらい、この日は休みでしたが急いで駆け付けました。ちょうど動物園に到着した18時頃、子が産み落とされました。子はこのあと、19時頃には立ち上がり、21時頃には授乳も確認されました。

今ではアヤトは1歳になり、すっかり大きくなりました。

運動場に出るアヤトとアヤメ

突然の別れにはなってしまいましたが、アヤメはきっと、日々様子をしっかり見て、たくさんの木の葉をとってきてくれ、健康管理に努めてくれた飼育担当者にとても感謝していると思います。

アヤメには、生命の素晴らしさを教えてもらい、ありがとうという気持ちでいっぱいです。

ずっとお母さんのアヤメと一緒にいた、1歳になったばかりのアヤトは、現在、父のハートと、兄のハヤテと同居しながら、アフリカ園に出る準備をしています。アヤメがいないのが心細いのか、まだアフリカ園への一歩は踏み出せていませんが、ゆっくり見守っていただければと思います。そして、アヤメもきっと、天国でもハートと、2頭の子、ハヤテとアヤトを見守っていてくれている、と信じています。

 

 

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