鹿児島フィールドレポート~秋の風物詩 サシバの渡り~
みなさんこんにちは!平川動物ウォッチング隊員の落合です。フィールドでは四季それぞれの生き物の様子が観察できます。一年通して、そうした姿を見ているとその年の傾向や生き物の状況がなんとなく読み取れることがあります。生き物について語る機会がある飼育員にとって、フィールド観察はとても大事なことです。さて今回は、鹿児島の秋の風物詩であるサシバの渡りについて紹介します。
まずサシバという生き物ですが、ずばりタカの仲間です。本州や九州には夏鳥として、東南アジアや南西諸島から飛来し、春から夏に繁殖をします。気温が低くなる秋の時期に過ごしやすい南方へ渡っていきます。地図を広げると一目瞭然ですが、鹿児島県本土から南に向かうとしても、ほとんどは海の上で、簡単に陸地では休憩ができません。そこで、全国に飛来していたサシバが鹿児島や宮崎の中継地に集結し、天候が良いタイミングで一気に南へ向かって飛び立っていきます。空を飛べる鳥でも無限に飛び続けることはできません。そこで小高い山の近くで待機し、タイミングを待ちます。タイミングとは、日の出とともに上がる地熱により発生する上昇気流をつかまえることです。それ以外にも風向きなども影響しているようです。山の上で上昇気流をつかまえたサシバはグングン上昇し、渦を巻き、四方八方から集結してきます。そしてその数が5から10、10から30、30から50と、条件があえば羽数がどんどん増えていきます。やがて数羽ずつ南へ向かって飛んでいきます。豆粒が米粒へ、そしてゴマ粒になり視界から消えていきます。この光景が主に、午前中に何度も、数日間にかけて繰り返されます。
はじめに書きましたが、日本にやってくるほとんどのサシバが宮崎や鹿児島を中継地にしますし、愛知県の太平洋側にも中継地があります。渡りの時期に、カウントすることで、その年の傾向をつかむことができ、日本での状況の一部が見てとることができます。
毎年、居心地が良いという理由で日本へやってきてくれていると信じて、今年も多くのサシバを見送りました。きっと何百年、何千年と繰り返されるこの渡りを、将来に亘って見つめていける環境を維持していきたいものです。ちなみに、オーストラリアの自然ゾーン近くには、奄美大島で保護されたサシバを展示しています。渡りの途中で、翼を骨折してしまいました。もう飛ぶことはできませんが、美しい姿はとても存在感があります。