6月22日にコアラの赤ちゃんが出袋(しゅったい:雌のおなかにある袋から出ること)しました。母親のヒマワリは昨年12月9日に出産しましたので、赤ちゃんは約半年間を袋の中で過ごしたことになります。
ところで、動物を長い間飼育していると親子・兄弟や親戚関係にある個体が増えてきます。動物園どうしで協力をして個体交換をするなど近親繁殖を避けるように努めていますが、頭数が少ない動物だと、それは容易ではありません。
今回の赤ちゃんの父親は、2022年9月にオーストラリアからやって来た「アーチャー」です。国内にアーチャーと血縁関係にあるコアラは他にいません。アーチャーとその子孫は日本国内のコアラ個体群に大きな意味を持ちます。
アーチャーを迎えるにあたり、去年の今頃は様々な準備に追われていました。オーストラリアからコアラを輸入するためには、オーストラリア政府と州政府の許可が必要です。飼育施設、飼育管理体制、餌となるユーカリの供給体制など詳細にわたる書類を提出し、許可を得なければなりません。書類は提出する前にアーチャーが生まれ育ったクイーンズランド州ゴールドコーストにある「ドリームワールド」のスタッフに繰り返しチェックしてもらいました。
コアラを輸出するにあたり、オーストラリア政府は
「コアラを送り出す側がコアラの移送に同行し受入れ側に対して飼育の指導を行うか、コアラを受入れる側が送り出す側に出向いて飼育研修を受けた上でコアラの移送に同行しなければならない」
というルールを定めています。
そういうわけで、去年の9月にコアラ担当者と私の2人はオーストラリアまでアーチャーを迎えに行きました。コロナウィルス感染症対策のため、通常よりも外国との行き来については多くの手続きや制限がありましたので、そちらの方でも大変でした。
オーストラリアに到着してからはコアラの飼育方法だけでなく、ユーカリ畑や野生のコアラが見られる森に連れて行ってもらったりして、多くのことを教えていただきました。ブリスベン空港からシドニー、東京を経由して鹿児島までアーチャーの移送に同行したことは私にとって貴重な経験になりました。
日本・オーストラリア両国の多くの方々の協力があり、アーチャーが無事にオーストラリアから来てくれて本当に良かったと思います。オスの赤ちゃんが健康に成長してくれることを心から願っています。
園長 福守