韓国に行ってきました

2024年12月2日から4日間、ソウル動物園に行ってきました。この訪問はソウル動物園のご招待によるもので、チンパンジーの群れの編成についてアドバイスをするのが主な目的でした。お話をいただいてから実際に行くまでが約2週間という、急展開のタイミングでの訪問となりました。

コロナ禍では休航となっていた鹿児島空港⇔仁川空港の便は、すでに再開され多くの乗客でほぼ満席でした。乗客のほとんどが韓国の方々なので、鹿児島空港国際線ターミナルにいる時から気分はすでに韓国にいるようでした。仁川空港までのフライト時間は実質80分ほどで、羽田空港まで行くより短い時間なのであっという間の到着です。

鹿児島空港国際線ターミナルから出発!

ソウルの緯度は宮城県と同じぐらいです。鹿児島と比較するとずいぶん寒いはずなので、私は十分に対策をして現地に到着しました。折しも11月27日からの積雪は117年の観測史上初の積雪量(45㎝/日)だったそうで、ソウル動物園に到着すると、いたる所に雪が残っていました。そして、大きなバードケージの金属製支柱が雪の重みでグニャリと曲がったり、折れた樹木が道をふさいでいました。滞在中の最低気温はマイナス3~4℃、最高気温は4~5℃で、同じ時期の鹿児島よりそれぞれ10℃ほど低いものでした。これほどの気温だと、平川動物公園では屋外に動物を出すことを躊躇しますが、ソウル動物園では屋外に出ている動物も結構見かけられました。寒い気候にある程度は適応しているのでしょう。

園内には雪が残っていました

1984年に開園したソウル動物園は、240ha(平川動物公園の約8倍の面積!)以上の敷地を有するソウル大公園内にあります。ソウル大公園には動物園以外にも遊園地、植物園、現代美術館があり、ソウル特別市が管理運営しています。同じ敷地にあった前身の動物園は、日本の占領下において1909年に宮廷を取り壊して造った動物園で、第二次世界大戦で壊滅的な被害を受け閉園したという複雑な歴史があります。飼育動物種数と点数は約220種2000点ということでした。大都会の動物園だけあって、年間入園者数は300万人以上で、さすがアジアでも有数の大都市、ソウルにある動物園です。

入園してすぐの案内板

動物園に到着するとクウォン園長はじめ、スタッフの方々にお出迎えいただきました。特に類人猿チームの皆様とは様々な意見交換を行いました。業務終了後も毎日食事会にお誘いいただき、夜遅くまでお話しする機会もありました。

類人猿館にはオランウータン、チンパンジー、ゴリラがいました

そんなソウル滞在2日目の夜、ホテルに帰ってニュースを見ると「戒厳令発令」の文字を目にしました。そう言えばスマートフォンに「緊急速報」が表示されていたのですが、本文はハングルだらけでまったく理解できなかったのです。「そういうことだったのか!」と分かると同時に、不安になってきました。

翌日の朝、街の様子も動物園に到着してからも、まったく昨日までと様子が変わりません。戒厳令について尋ねてみると、「韓国の人たちは一部の人以外は冷めていて『どうしようもないなぁ』ぐらいにしか感じていませんよ」とのことで、安心しました。

ソウル動物園にはチンパンジーが6頭いて、そのうち2頭が人工哺育(人が親代わりにミルクを与えて動物の仔を育てること)で成長したチンパンジーでした。母親がうまく授乳ができない時などに人工哺育による育児を選択しますが、このようにして育つと人にはよく馴れてもチンパンジー同士の関係をうまく築くことができないチンパンジーに育ってしまう可能性が高くなるのです。

ソウル動物園のチンパンジーたちの個体紹介
チンパンジー屋外展示場 高いタワーがそびえています

2頭の人工哺育チンパンジーを、「いかにして4頭のグループに仲間入りさせ6頭の群れにするか?」という課題を解決すべく、日韓の動物園関係者が一緒になって意見交換しました。私自身、過去に人工哺育チンパンジーを含む群れの形成に関わった経験があるので、その時の知見を紹介させてもらいました。

類人猿舎でのミーティング

今回の訪問を通じて、動物たちの幸せのために動物園関係者が労を惜しまず最善を尽くす姿は、国の違いはあっても世界共通のものだと感じました。

ソウル動物園の皆様の熱い想いと温かいおもてなしの心に触れたことにより、大きな力を得て日本に帰国しました。両国の動物園がますます発展することを心から願っています。

園長 福守

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