みなさんこんにちは!平川動物ウォッチング隊員の落合です。今回のズーブログでは、6月末より断続的に噴火が続く、新燃岳を含む霧島山系の状況を紹介したいと思います。
霧島山系は、鹿児島県と宮崎県の境に位置する山々の総称で、最高峰の韓国岳(1700m)や高千穂峰(1574m)などの火山で構成されています。火山帯なので温泉が豊富に湧き出し、湯けむりも様々な場所で見ることができます。この霧島の活火山で代表的なのは新燃岳で、2018年にも噴火が確認されました。鹿児島には他にも桜島という日常的に噴火を繰り返す有名な活火山があり、ある意味「火山の活動には慣れている生活」を送っています。それでも新燃岳の噴火は数年ぶりですので、やはり勝手が違います。前回の噴火でも生き物たちが厳しい環境で生きている様を観察してきましたが、今回も安全に留意し霧島へ向かうことにしました。

霧島方面に向かうには、鹿児島市内からだと鹿児島空港ICで下りて、下道で向かうことが多いでので、今回もそのルートを利用しました。空港ICを降りると、すぐさま異変に気が付きました。なにやら景色が白っぽいのです。特産の霧島茶の畑も灰色に見えます。新燃岳から20㎞程離れているにも関わらず、火山灰が降り注いでいたのです。
そこからさらに進んでいき、霧島温泉郷の近くまでやってきました。コンビニエンスストアで朝食を買おうと車を止めると、辺り一面灰だらけの世界です。車が走るたびに灰ぼこりが舞います。これはきつい… あっというまに車も灰色に…



ここで気づいたのが、鹿児島市内ではおなじみの桜島の火山灰と異なる雰囲気です。桜島の火山灰はどちらかというとザラザラしており黒っぽいですが、新燃岳の火山灰はさらに細かく小麦粉のような感触です。白っぽくて服につくと繊維まで入り込んで、はたいただけでは落ちません。
とりあえず宮崎県との県境のえびの高原を目指すことにします。新燃岳にもっとも近い西側を通る道では、火山灰が2~3センチほどつもった場所もあり、対向車とすれ違うたびに前がまっしろになります。しかもかなりの硫黄臭がします。この調査の数日前には大きな噴火があり火口から5000mにまで噴煙が上がったとのことですから、そりゃつもりますよね。車をとめてしばらく歩いてみると、あたりは雪がふったような静けさがあり、生き物の気配はありません。




道路わきの植物には灰が降り積もり、光合成ができない状態となっていました。
道路に目を向けると、灰の上に足跡があります。霧島には多くのキュウシュウジカが生息しているのでその足跡です。またアナグマの足跡もありましたので、灰がふっても活動は続けている様子でした。


すると前から茶色い生き物が歩いてきました、ネコかな?と思いましたが、歩き方が違います。なんとホンドテン(イタチの仲間)です。夜行性で昼間に見ることはほとんどありませんが、だれもいないこのような環境で警戒もせず、移動をしていました。私の存在に気づいていましたが、慌てるそぶりもなく、そのまま目の前を通り過ぎていきました。


えびの高原まで上がると、灰の影響は幾分ましてでしたが、雨のように空から灰がふっています。
しばらく高原を散策しましたが、普段は登山や観光で来られる方がほとんどおらず、当然ですが、今回の噴火で人にも大きな被害を受けている印象を強く受けました。

新燃岳を含む霧島山系は、有史以来多くの火山活動を繰り返し、その恩恵としてミヤマキリシマが咲き誇る景色や温泉などで人々を楽しませてくれています。生き物がタフに暮らしているように、このような状態でも、安全さえ確保できれば貴重な自然現象を体験できる空間だと感じました。


火山活動が落ち着くことを願い、鹿児島や宮崎も降灰の影響を大きく受けた地域もありますが、ほとんどの地域が普段通りに過ごしています。観光に来られる方はこれ以上火山活動が大きくならないようなら、特に心配をせず、事前に情報を入手しお越しいただければと思います。もちろん平川動物公園も通常通り営業しておりますので、ぜひ遊びにきてください。