動物園や水族館で働く職員にとって、自分自身の知識と経験を客観的に評価し、スキルアップを図るための目標の一つが「飼育技師資格認定試験」です。
今回は、平川動物公園も加盟している公益社団法人日本動物園水族館協会(略称:JAZA)が実施するこの試験について、その歴史や意義、そして当園職員の受験についてご紹介します。

【飼育技師認定試験の歴史と目的】
JAZAが実施するこの試験の目的は、「飼育技術者の資質と飼育技術の向上および動物園水族館の発展に貢献すること」とされています。
その歴史は古く、認定基準が定められたのは1971年。第1回試験は、平川動物公園が開園した年と同じ1972年の2月に実施されました。以来、半世紀以上にわたり、動物園・水族館業界の知識と技術の向上と継承を支えています。

【キャリアに応じた二つの試験区分】
2022年度からは、キャリアに応じた専門性を問うために試験区分が二つに分けられました。
- 飼育技師一般試験: これまでに実施されていた飼育技師認定試験と同様、実務経験2年以上の職員を対象に、飼育技術者としての基礎知識を問う。
- 飼育技師上級試験: 中堅職員・管理職(実務経験10年以上)を対象に、動物園水族館を取り巻く社会情勢、保全、教育、アニマルウェルフェア(動物福祉)など、より高度な知識を問う。
このように上級試験が始まった背景としては、業界を取り巻く状況が時代とともに変化し、より高い専門性と幅広い知識が求められているからではないかと考えます。

【私の受験体験記】
私も20代の頃に飼育技師認定試験に挑戦し、合格しました。
受験前は動物園職員必携の参考書と言われるJAZA発行の「飼育ハンドブック(全5巻)」を懸命に勉強した記憶があります。その時に身につけた知識は今でも私の財産です。
余談ですが、本来なら実務経験2年で受験できるところ、当時の上司が申し込みを失念していたため、私はその翌年の受験となりました。そのような経験があるので、当園で受験希望者を募り、取りまとめ、申し込む立場となった今、絶対に漏れがないよう、確認に確認を重ねています。
2022年度、上級試験が新設された際には、受験資格「実務経験10年」は軽々とクリアできていましたので、私自身も上級試験に挑み、無事に合格することができました。

【全国トップクラスか? スタッフの向上心】
実は、平川動物公園は全国的に見ても上級飼育技師の多い園と言えます。
これまでに当園で上級飼育技師試験に合格した職員は11名にのぼります。独自に調査したところ、一つの園にこれほど多くの上級飼育技師が在籍しているのは、関東地方の大規模な動物園と並んで全国で最も多い人数でした。
規模が大きな園は職員数も多くなります。そのため、「全職員に対する上級試験合格者の割合」で言えば、平川動物公園は全国トップクラスではないか?と自負しています。他園では園長クラスが受験するのはレアケースで、これまでの合格者の中で園長は片手で数えられる人数です。私は「現場も管理職も共に学ぶ」という姿勢であることが理想だと考えています。職員に対して受験を強制しているわけではなく、合格しても待遇面が特に変わるわけでもありませんが、当園で上級飼育技師に挑戦する職員が多いのは、向上心の表れであると感じています。
また、この春は嬉しいニュースが他園からも届きました。私の前職である高知県立のいち動物公園のH田園長も、今回の試験で見事上級飼育技師に合格されました。のいち動物公園の園長ブログによると「園長としては最年長合格者ではないか?」とのことで、誠におめでとうございます!挑戦することだけでも意義がありますが、見事合格されるのはさすがです!!
私も実感していますが、年齢とともに記憶力などは衰えがちですので、H田園長は寸暇を惜しんで勉強に励まれたのだと思います。 園のリーダーの挑戦が職員の刺激となり、園全体ひいては動物園水族館業界全体の底上げにつながるのだと確信します。

【これからの飼育技師に求められるもの】
2025年度は当園から一般・上級それぞれ1名ずつが受験し、見事2人とも合格しました。先日、合格証書と記念のバッジがJAZA事務局から園に送られてきたところです。
現在、動物園にはアニマルウェルフェアのさらなる向上のほかにも、多様な社会的役割が求められています。試験合格はゴールではなく、動物たちの生活の質と来園者の満足度をより高めていくためのスタートラインです。
博物館法の上では、動物園は生きた動物を展示する「博物館」として位置づけられています。博物館の専門職である学芸員の資格を有する職員は当園に私も含め13名います(昨年度末、新たに5名が資格認定)。博物館としての動物園は単に動物を飼うだけではなく、より質の高い飼育・展示を行い、あわせて動物に関する教育普及・調査研究活動も大いに推進することが求められます。
これからも当園の職員一同、プロフェッショナルとしての自信と誇りを持ち、動物たちと社会のために研鑽を積んでまいります。
園長 福守
