シカの秋 (後編)

シカの秋(前編)では、シカの角のお話をしました。
秋のシカと言えば、声にも特徴があります。
オスは繁殖期特有の声を出してメスにアピールします。

そんなことを言うと、
「何て鳴くの?」
と尋ねられて、困ることがしばしばありました。
「文字で表せば何だろう?」
と考えた末に動画投稿サイトで検索してみました。
すると、オスのシカの声を
「フィーヨ~ン」
と表現している投稿者がいました。
なるほど、そんな感じです。

マゲシカのメス

小倉百人一首に

「奥山に紅葉踏みわけ鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき」

という猿丸太夫の句があります。現代語訳としては

「山奥に紅葉を踏み分けて歩いていくと、哀しげな鹿の声が聞こえてきた。この秋の寂しさが、いっそう感じられることだ。」
ということになりますが、紅葉を踏み分け歩くのが人なのかシカなのかは解釈が分かれるようです。

角を突き合わせて戦うオスのマゲシカ

オスのシカたちにとって秋は繁殖期であり、自分の存在をアピールしつつメスをめぐってライバルと戦う日々なので、実際には「秋は哀しい」なんて言ってられないようです。
そんなシカを観察しつつ、深まりゆく秋を平川動物公園ですごしてみてはいかがでしょうか。

園長 福守

トップへ戻る