そろそろ○○の季節です!

皆さん、こんにちは!
フライングケージ、世界のツルゾーン担当の日高です。
南国鹿児島といえども、10月に入り朝晩は肌寒くなってきました。
ツルの飼育担当をしていると、10月に入った頃から「そろそろだなぁ。。。」と毎年楽しみにしていることがあります!
それは、 出水平野への「ツルの飛来」です!!

飼育員になって以来十数年、毎年欠かさずに観察に出向いています。(本来なら羽数がピークになる1月~2月頃に観察に行くのが理想ですが、鳥インフルエンザが発生すると職業柄行きづらいので、結局10月~11月に行くことが多いです)
ツルの飼育担当なので他の誰よりも毎日至近距離でじっくり見ているにもかかわらず、不思議な事に⁉(時には遥か遠くにいて豆粒程にしか見えないことも多々あるのに)野生のツルはとても魅力的で、飽きずに早朝から夕方まで観察に没頭してしまいます。
担当動物の野生下での様子が県内で観察できる環境があることは、飼育員として非常にありがたいことです。

ツル観察センター展望台からの様子
令和3年11月18日に「ツルの越冬地」がラムサール条約湿地に登録されました

鹿児島県民の皆さんには「ツル=冬」のイメージかもしれませんが、実際には10月から少しずつ飛来しています。
ツルが飛来することは皆さんよくご存じかもしれませんが…では、いつ来て・いつ帰る?、どんな種類のツルが?、何のために来ているのかはご存じでしょうか?
普段ツルの飼育中に、看板を読んでいる来園者の方の会話を聞いていると「(鹿児島弁で再生)あー、こいは出水に来るツル~、え、こんツルも来っと?あ、こいもやっち!」とそんな会話がよく聞こえてきます。

いつ来て、いつ帰る?

毎年10月初旬~中旬頃に第1陣のツルたちが繁殖地のロシアや中国から出水平野に飛来します。
2月~3月にかけて、天気や風向きなど条件の良い日を選んで天草・長崎、朝鮮半島を経由して、再び繁殖地であるロシアや中国へ帰っていきます。←これを北帰行(ほっきこう)といいます。

北帰行の様子(Ⅴ字に編隊を組んで集団で飛んでいきます)

どんな種類のツルが来るの?

出水平野で観察できるツルの種類は、世界にいるツル15種のうち今までに7種のツルと1雑種が観察されています。(当園の世界のツルゾーンでは11種が観察できます)

当園の世界のツルゾーン(看板)


最も多く飛来するのはナベヅルで約9,000~1万羽(世界の約8~9割のナベヅルに相当)

ナベヅル


その次に多く飛来するのがマナヅルで約3,000羽(世界の約5割のマナヅルに相当)

マナヅル

その他少数ではありますが、クロヅル・カナダヅル・ナベクロヅル(雑種)も飛来します。
(実際には1万数千羽の中に数羽しかいないので、まさに「ウォー○ーをさがせ!」状態です)

クロヅル(画像中央)
カナダヅル(画像中央)
ナベクロヅル

年によっては稀に、アネハヅル・ソデグロヅル・タンチョウなどが飛来することもあります。

ソデグロヅル

何のために出水平野に飛来するの?

繁殖地である中国やロシアから出水平野に飛来するのは越冬のためです。
夏に繁殖地で子育てをし、秋になるとその年生まれの子どもを連れて家族そろって飛来します。
多くのツルが集団で越冬するので、若いツルにとっては出会いの場にもなっています。

ナベヅル幼鳥(頭部がクリーム色をしており、鳴き声はピーピー。家族単位で行動します)

ツルの越冬は県民にとってお馴染みの光景ですが、ねぐらの整備や給餌などの保護政策・渡来期間中の監視など、関係者・農家さん・地元の方の理解と協力があればこその光景であることも忘れてはいけないですね。

1万羽を超えるツルが人家のすぐそばで越冬していることは世界でも珍しく、ぜひ一度は見ていただきたい光景です。(ツル以外の野鳥にも数多く出会える夢のような場所でもあります)
見渡す限りのツルの多さに圧倒されたり、自分の真上を沢山のツルが飛んでいたり、ツルの逞しさ・美しさ、鳴き声の力強さなどを感じられると思います。

出水平野にツルを見に行く際に守ってほしいこと
・ツルのいる場所に入らない。(鳥インフルエンザ防疫の観点だけでなく、田畑はツルたちの保護区となっています。そして農家さんの土地でもあります。)
・防疫のために消毒スポットがあるので、通行の際はゆっくり進み車をしっかり消毒する。
・路上駐車など、通行の妨げにならないよう配慮し観察する。

出水平野にツルを見に行く前に動物園で予習するのもおすすめ!
現地に行くとあまりのツルの多さに、何を(どこを)見てよいか分からないと聞くことがあります。
野生動物ですので、動物園のツルのように至近距離で観察することは難しいです。
しかし動物園では近くで観察可能ですし、出水平野で観察される種(雑種を除く)はすべて飼育しています!
当園では世界にいるツル15種のうち11種を飼育していますが、世界でここまでの種数を飼育していることも実は珍しいのです!
世界のツルゾーンは順路通り進むと、出水平野に飛来するのが多い種順に並んでいるので覚えやすいかもしれません。

昨年は鳥インフルエンザの影響が大きい年で、出水平野でも多くのツルがその影響を受けました。ツルの越冬中の行動や移動にも影響を及ぼしたと聞いています。
鳥インフルエンザが発生しないのが一番ですが、万が一発生したとしても被害が拡大しないことを願うばかりです。
動物園でも鳥インフルエンザ対策に気の抜けない日々が始まります。。。

夕日とマナヅル


出水市はみかんの産地!観察のついでに美味しいみかんを買うのも楽しみしている フライングケージ、世界のツルゾーン担当 日高

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