ツルの迷子

こんにちは!

ツル担当の江川です。

突然ですが皆さんは「ツル」といったらどんな鳥を思い浮かべますか?

多くの方がタンチョウを思い浮かべると思います。

実際にツル舎の掃除をしている時に、来園者の方がタンチョウを見ながら、「これがツルって感じ!」とか「日本のツルだ!」とか聞こえてきます。

平川動物公園で飼育しているタンチョウ

 

確かに北海道に住むタンチョウは有名で、特別天然記念物にも指定されている美しいツルです。

しかし!

鹿児島県でもツルが見られることをご存知でしょうか?

それが平川動物公園でも飼育しているナベヅル、マナヅルをはじめとする、出水に飛来するツルの仲間です。

「鹿児島県のツルおよびその渡来地」が特別天然記念物に指定されています。

順調にツルの数が増えてきている10月末の出水

 

「渡来地」という言葉が使われているように、鹿児島県で見られるツルは渡り鳥です。

夏はシベリアなどで繁殖や子育てを行い、厳しい冬を避けるために日本まで飛んできます。

10月末くらいから徐々に渡来が確認され、2月中旬ごろからまたシベリアに向けて飛んでいきます(北帰行といいます)。

ナベヅルの飛翔 大きな鳥なので実際に見ると迫力がある

 

さて、そんな出水に渡来するツルですが、昨年1羽のナベヅルが平川動物公園に現れました。

最初に見たときは飼育個体を逃がしたかもしれない!と焦りましたが、羽の色から幼鳥ということがわかり、野生のナベヅルが迷い込んだということがわかりました。

平川動物公園に迷い込んだナベヅル 頭の色が全体的に白いため幼鳥ということがわかる

 

通常、その年に生まれた幼鳥は家族単位で渡りを行うため、親とはぐれて迷った個体が飼育個体の鳴き声を聞いて、平川動物公園にたどり着いてしまったのかもしれません。

1羽だったからか、飼育しているナベヅルから離れようとせず、数日間ツル舎の周辺にとどまっていました。

左:飛来した幼鳥 右:飼育しているナベヅル(成鳥) どちらも警戒せずに、近くにいることが多かった

 

ツルは特別天然記念物のため、許可なく捕まえることはできません。

もちろん野生の生き物なので餌を与えることも禁止です。

環境省や鹿児島県自然保護課、クレインパークいずみに連絡し、捕獲して出水で放鳥する許可を取り、出水干拓にて放鳥を行いました。

生き物がパニックになると、思いもしない事故につながる可能性があります。

たくさんの方に協力していただき、生き物も人間も怪我無く捕獲、移動をすることができました。

東干拓での放鳥 一目散にほかのツルのもとへ飛び立った

 

私は防疫のため放鳥には立ち会えませんでしたが、動画などで元気に飛び立っていく様子が見ることができて安心しました。

法律上、足環などの目印をつけることができなかったので、平川動物公園に来た個体というのはわからなくなってしまいましたが、無事に北帰行を終えていたらいいなという気持ちです。

お客様から見える位置にいましたので、もしかしたら見られた方もいたのではないでしょうか?

ナベヅルの幼鳥が居た期間、あたたかく見守ってくださってありがとうござました。

脱走個体ではないことを知らせる看板

 

鹿児島に来るツルのお話と、ベテランのスタッフに聞いても「こんなことは初めて」といわれたとても珍しい出来事のお話でした。

それではまた。

シマウマ・ツル担当:入社2年目の江川

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