ホッキョクグマのライト

オスのホッキョクグマ「ライト」が3月9日に和歌山県の動物園から来園し、3月22日から展示が始まりました。2020年10月にメスの「カナ」が死亡して以来、約2年半ぶりにホッキョクグマがお目見えしたことになります。

公開初日は多くの方々が訪れました

約2年半の間、空になったホッキョクグマ展示場の近くを通る時に

「なんだ、いないのか…」

という声が聞こえてくるのは辛いものがありました。

ホッキョクグマは地球温暖化や海洋汚染など、人間の経済活動による生息環境の変化により野生での頭数は減少傾向にあります。動物園でのホッキョクグマの繁殖は容易ではなく、国内の動物園では30年の間におよそ半数になってしまいました。

ホッキョクグマの「カナ」(2020年に死亡)

ホッキョクグマは極寒の地にくらすエネルギッシュでタフな生き物です。行動範囲が広く、氷の海で狩りをする、そんな彼らを日本の動物園で飼育することに対して疑問の声があることも事実です。

単純に「魅力的な動物だから」、「以前いたから」、「見てみたいから」という理由で飼うべき動物ではないと考えます。

職員からは「ホッキョクグマ舎を別の用途に使ってみては」という提案もありました。

もともとホッキョクグマ用に作られた施設を別の動物種のために使うとなると、施設の改修が必要です。また、「世界のクマゾーン」内にホッキョクグマ舎があるため、まったく異なる種類の動物種を展示するのは違和感があります。様々な理由があり、ホッキョクグマ舎は空の状態が続いていました。

平川動物公園も加盟している公益社団法人日本動物園水族館協会では、各動物種において計画管理者を中心に繁殖計画とそれに伴う動物の移動計画が立てられます。また、加盟園館どうしの情報交換を活発に行っており、平川動物公園ではホッキョクグマについても情報収集に努めてきました。一連の動きの中で、新たにライトが来園することになったのです。

ライトは3月8日に和歌山県のアドベンチャーワールドを出発し、翌日朝に平川動物公園に到着しました。初めての長旅なので、さぞ緊張したことでしょう。輸送ケージからホッキョクグマ舎へは意外にすんなりと入ってくれました。

平川のホッキョクグマ舎に到着!

徐々に環境に慣れてきたら、屋外へ出る練習です。以前くらしていたのは屋内型の施設だったので、ライトにとって初めての匂いや物音も数多くあったのではないでしょうか。近くに舞い降りたカラスに関心を示すこともありました。これも初めての経験だったようです。日を追うごとに徐々に行動範囲が広がり、プールでダイナミックに泳ぐようになりました。ここまでくれば大丈夫です。

プールでのびのびと泳ぐライト

ライトの移動計画が決まってから公開当日をむかえるまでに、多くの関係者の皆様のご支援とご協力がありました。心より感謝申し上げます。

もちろん、平川のスタッフの陰での努力もありました。

潜ることも得意です!

ライトに会いに来たら単に「かわいい」「珍しい」と見るだけではなく、ホッキョクグマたちの数が減っていることを知り、その背景にある地球温暖化などの環境問題についても考えるきっかけになったら嬉しいです。

園長 福守

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