動物園でくらす動物たちにも「戸籍簿」があります。
正確に言うと血統登録台帳と呼ばれるものです。全国各地の動物園でくらす動物たちの個体番号、名前、性別、出生地や両親の情報、現在の飼育地などのデータが載っており、毎年追加・更新されています。
なぜ血統登録台帳が必要なのでしょうか? その理由をご説明しましょう。
①個体情報の収集と蓄積
私たち動物園で仕事をする者が「この動物の年齢は?」と質問されて「○○歳です」と答えられるのは、動物たちの個体情報が十分に管理されているからです。どこの動物園でいつ生まれて、いつ平川動物公園に引っ越してきたのか、そのような情報を動物園どうしで共有しているのです。
残念ながら動物が死亡した場合、血統登録台帳には死亡年月日とともに死因が記されます。特定の疾病に罹りやすいことが分かれば、それを予防することにも役立つのです。
②近親繁殖を防ぐ
動物園で生まれた動物が成長すると、他の動物園に引っ越すことがあります。お嫁さん、お婿さん候補として新天地へ行くのです。その反対に他の動物園から仲間入りすることもあります。
動物の結婚相手を決める時に私たちが気にするのは、「近親繁殖にならないか」ということです。できる限り血縁関係がない(親子・兄弟・親戚ではない)組み合わせで繁殖させることが望ましいのです。近親繁殖では生まれてくる子どもの体格がよくなかったり、特定の病気に罹りやすかったり、奇形が生じたりするなどの弊害があることが知られています。
血統登録台帳を見れば、先祖をさかのぼることができますから、近親繁殖にならないような繁殖計画を立てることができます。
血統登録台帳は毎年12月31日現在の情報を基に更新されます。それぞれの動物種には血統登録台帳を作成する担当者(種別計画管理者または個体群管理者)がいて、役割を分担しています。例えば、キリンは東京都多摩動物公園、コアラは名古屋市東山動物園の担当者がその役割を担っています。
各動物園では年が明けると調査票を記載して、血統登録台帳を作成する担当者に報告します。担当者はその情報を取りまとめ、完成した血統登録台帳を各園に送付します。
私はナベヅルの血統登録台帳を2015年から作成しています。鹿児島県の出水平野にナベヅルが数多く飛来する縁もあって、平川動物公園の職員が代々ナベヅルの血統登録台帳を作成しています。
毎年、締切りギリギリになって血統登録台帳の更新作業をやっています。本当はもっと早く取りかかればいいのですが。この作業をするたびに、遠い昔の夏休みの宿題を思い出します。
新しい血統登録台帳を完成させたので、ホッとしてブログを更新しました。
園長 福守