春よ来い! 寒波襲来…ユーカリ奮闘記録

みなさんこんにちは!平川動物ウォッチング隊員の落合です。今回のズーブログでは、コアラのエサであるユーカリのお話です。南国鹿児島はユーカリ栽培に適しており、一年を通じてコアラが好む新芽の部分を安定して供給できます。しかしながら…数年に一度は大寒波による冷害や積雪による被害が出てしまいます。毎年ではなく、たまにあるぐらいなので、気にしなくてもいいのでは?と思ってしまうかもしれませんが、結構深刻で、飼育担当者の腕の見せどころとなります。3月に入り、なんとか状態が上向きになりそうなユーカリ事情について紹介したいと思います。

雪が降る中でも採取をしています

まず簡単にユーカリ栽培について紹介します。平川動物公園ではユーカリしか食べないコアラのために、鹿児島市内や指宿、種子島にユーカリ圃場を持っています。10種類以上のユーカリを栽培し、季節や好みに合わせて採取を行っています。日常の管理は、草刈り、肥料の散布、枝の成形などなど、多岐にわたります。物言わぬ木ですので、動物以上に管理は大変です。気がついた時には時すでに遅し…ということもあります。採取のために枝を切りますので、時期や場所を間違えれば簡単に枯れます。貴重なユーカリを維持するために、コアラ担当者はユーカリのことが頭から離れない日々を送っています。ちなみに寒波の影響を受けたユーカリは、葉っぱはパリパリに枯れてしまい、春の芽吹きの時期まで復活はしません。最悪の場合は木が枯れることもあります。

そんなユーカリを1月に大寒波が襲いました。天気予報の発達で、寒波がやってくることは1週間前から見当がつきます。念のためユーカリのストックを日々増やしていきました。保管用冷蔵庫にはもちろん、バックヤードの通路にもどんどん保管していきました。10日間分ほどストックして、なんとかなるだろうとその時は思っていました…

そんなユーカリを1月24~25日に予報通り寒波が襲いました。24日の当日もギリギリまで採取を行い、枯れてしまうユーカリを少しでも無駄がないようにしました。天候はどうにもならないので、あとは祈るだけで翌日を迎えました。

翌朝、自宅の前は銀世界。庭に植えているユーカリも積雪でしんなりしています。急いで動物園へ向かい、園内のユーカリ畑の状態を確認しました。積雪量が思ったより多くなく、ユーカリへの着雪は少なく、すぐに溶けると判断しました。(最悪の場合は人海戦術で木をゆすって雪を落とします)

ユーカリ畑も銀世界… 
昼前には雪がとけ、葉っぱへの積雪もすくなかったのですが…

ただ冷害の影響は時間とともに出てきます。今回も徐々にユーカリの状態が悪くなり、1週間後には見るも無残な状態の畑ばかりになりました。

とてもじゃないですが、普段ならエサとして使用しないユーカリになってしまいましたが、エサがありませんとはいえません。コアラが待っています。

新芽はチリチリになってしまいました
寒波から約1か月たったユーカリ畑 品種によって冷害の影響が異なります。

このようなことがあるので、対策はいくつかとっています。まずは冬期に状態の良いユーカリを確保するために、管理委託をお願いしている畑の状況を確認しました。指宿市、内之浦、種子島の3エリアがあります。指宿市と内之浦は、動物園周辺とあまり変わらず状態は良くなかったですが、山間部の畑は北風の影響を強く受けなかったため十分エサとして使用できる状態でした。素晴らしく状態が良かったのは種子島でした。離島だけあって霜もほとんどおりません。普段と変わらないユーカリを供給できそうだったので、一安心でした。それでも、毎日80㎏ほど使用する量には届きません。

でも大丈夫!当園の強みである、コアラ担当者がユーカリ採取を行うのがここで生かされます。一見状態が悪そうなユーカリでも、食べられる部分が少なからず残っています。畑へ出向いて、少しでも可食部位がある枝を持ち帰るようにしました。そして新鮮な状態であれば良く食べてくれるので、スピード勝負でたくさんの枝を与えるようにしました。

コアラたちもあまり気にせず、体重の減少などもなく過ごしてくれています。

天気予報とのにらめっこ(最低気温のチェック!)もそろそろ終了する時期です。

ちょっと見栄えは悪いユーカリですが、しっかり食べてくれています!

コアラ担当の宿命とはいえ、台風と冷害には本当に気を使います。

それでも40年近くコアラを継続して飼育できているのは、当園の飼育管理が間違っていないことだと自負しています。

春本番を迎える鹿児島。ユーカリの新芽を美味しそう食べるコアラたちに会いに来てくださいね!

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