鹿児島フィールドレポート ~出水ツルの越冬地 ラムサール条約湿地登録~

みなさんこんにちは!平川動物ウォッチング隊員の落合です。鹿児島の冬の到来を感じる話題といえば、私は「ツルの飛来」です。そして、11月18日に「出水ツルの越冬地」が「国際的に重要な湿地を特定するための9つの基準」のうち、「定期的に2万羽以上の水鳥を支える湿地」など4つの条件を満たしていることから、国内で53番目となるラムサール条約湿地に登録されました。このような素晴らしい環境が県内にあることから、毎年観察に出向いています。

大きな体で飛翔する姿は非常に美しい光景です

2021年の初飛来は10月18日で第一陣としてナベヅルが17羽確認されました。12月にかけてナベヅル以外にもマナヅルやカナダヅルなど、近年では1万5000羽以上が越冬のためにやってきます。この越冬とは、繁殖期に過ごしていたシベリアや中国などから、冬の時期に採食や子育て、休養のためにやってくることです。鹿児島県出水平野は、世界的にも貴重な越冬地で、ナベヅルは世界中の9割近くの羽数が出水平野で過ごします。

ナベヅルの家族
民家の近くでも普通に暮らしています

観察に出向いたのが、昨年の10月中旬でまだ3000羽程度しか飛来していませんでした。しかしながら、干拓地の田んぼには大きなツルの姿と甲高い鳴き声が響いています。この鳴き声を聞くと「冬がくるな~」と感じてしまいます。ほとんどはナベヅルとマナヅルですが、違う種類のツルも時折飛来します。カナダヅルやクロヅルはおなじみの毎年の少数飛来のツルですが、今年はソデグロヅルが9年ぶりにやってきました。

真ん中の白いのがソデグロヅル

一目でいいから、野生のソデグロヅを見てみたい! たくさんいるツルから見つけることが出来るだろうか?という気持ちで探しはじめました。しばらくあたりを見回して移動していると、数台の車が列をなして止まっていました。その先にはツルの群れがいたので、双眼鏡で見てみると、遠くの草陰に大きな白い鳥を発見しました。「ん?ダイサギ(通名はシラサギ)」と思ったのですが、よーく見てみると、お目当てのソデグロヅルではないですか!

他のツルに比べて、明らかに大きく、白さが際立っています。種類が違うマナヅルと行動を共にしているようで、違和感なくエサを食べてくつろいでいる様子でした。

どこがソデグロかというと…
翼の先端に黒い羽があります。羽を広げないとほとんど見えません

今シーズンの羽数調査では、1万6840羽が確認されており、25季連続の「1万羽以上」が飛来してきたことになります。たくさん来てくれることは喜ばしいことですが、ものすごい数のツルが限られた場所で過ごすことには、リスクも付きまといます。そのひとつが感染症などの蔓延です。近年では鳥インフルエンザの発生が確認されており、越冬地の分散化への取り組みも行われています。なかなか一筋縄ではいきませんが、ラムサール条約にも登録され、ますます注目される「出水のツル」たちが安全安心で過ごしていける環境づくりに、動物園としても情報発信等に取り組んでいきたいと思います。

地元の方の協力により、田んぼなどが休息地として提供されています。
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