みなさんこんにちは!平川動物ウォッチング隊員の落合です。今回のズーブログでは、2025年5月に東シナ海沿岸で大量確認されたクリイロカメガイについて紹介したいと思います。
クリイロカメガイと聞いて、姿形が思い浮かぶ方はまずいないのではと思います。しかし、ハダカカメガイと聞くと、「あ~ 流氷の天使クリオネね」とご存じの方が、いらっしゃるのではないでしょうか?クリイロカメガイとハダカカメガイ…名前がなんとなく似ているこの2種は同じ軟体動物の仲間で、大まかに分けると貝の仲間です。しかも海中をプカプカと浮いて泳いで過ごす浮遊生物で、姿は似ていませんが泳ぎ方はそっくりです。

この奇妙な生き物に偶然出会うことができたのは5月27日のお昼前でした。梅雨に入ると、鹿児島県では各地の砂浜でウミガメの産卵が見られます。この日も、上陸跡の確認のため日置市の吹上浜に出向きました。少し時期が早いせいか歩いた周辺では見当たらず、波打ち際に移動してビーチコーミングをしようと目線を下におろしました。
妙に黒っぽいゴミがたくさん落ちているなと思っていましたが、なんとなく見覚えのあるものだと記憶がよみがえりました。「カメガイの殻だ!しかも大量にある!」一気にテンションが爆上がりです。


我が子と来ていましたが、子どもそっちのけで写真と記録をとり始めました。
よく見るとまだ生きているのがいます。もしかすると水辺の潮だまりでも見つかるのではと思い、少し沖のほうへ移動しました。予想はあたり、大量のクリイロカメガイが潮だまりで泳いでいます。


南国のクリオネや!と思わず口ずさむほどの泳ぎっぷりです。色が茶色いので、見る人によってはやや不気味かもしれないので、南国の天使は適切な表現ではないかなと…

過去に飼育をしたことがありましたが、1~2日で死亡してしまいました。飼育環境やエサの問題があるのは明白で、そもそも長期飼育の記録もありません。ですので、今回は持ち帰らず、落ちていたペットボトルに入れてしばらく様子を見ていました。


せわしなく泳ぐ様子から、ある程度自力で移動できることが想像できます。ただ今回の大量漂着は沖合で生息していたクリイロカメガイが、前日夜間からのやや強い北西の風と大潮の潮の満ち引きが影響し漂着したのかなと想像ができます。毎日貝堀りに来ている方にお話を聞くと、前日の26日には全くいなかったとのことだったので、南東の風が北西に変わったのが引金になったのでしょうか?
今回の漂着は長崎県の対馬、熊本県の天草、鹿児島県の長島でも報告されています。広範囲で確認されたので、本種の個体数が卓越的に増加したのか、たまたま高密度で分布し漂着したものかは不明ではありますが、今後調査が進むと何かわかるかもしれません。ちなみのこのような現象は頻回に確認されてはいませんが、数年に一度話題になることがあります。
今回、ウミガメの上陸跡は確認できませんでしたが、クリイロカメガイの特記的事象を記録することができました。国内最大級の砂浜である吹上浜は、お散歩するにはもってこいの場所です。平川動物公園からお車で約40分の距離ですので、お越しの際はぜひ足をお運びください。