早いもので2023年が終わろうとしています。ふり返ってみると、私は全国のいろいろな動物園・水族館・博物館を訪問させてもらいました。昨年12月から今年11月までの過去1年分を書き記してみます。
2022年12月
【動物福祉評価員研修】
京都市動物園で行われた研修に参加しました。動物福祉の観点から各動物園・水族館を評価する試みが進められていますが、その評価員を養成するための研修です。2日間、みっちりとレクチャーを受け、模擬監査を経験しました。研修は朝早くから行われたので、鹿児島を前日に出発して、大阪市にある天王寺動物園を訪問しました。新施設「ふれんどしっぷガーデン」では動物福祉に配慮した教育プログラムを視察しました。
2022年12月
【ボルネオ保全プロジェクトチーム会議】
名古屋市東山動物園で行われる会議に日帰りで参加しました。この日は鹿児島では珍しく雪景色となり、空港へ向かう道路が渋滞していて「間に合うだろうか?」と心配しました。
平川動物公園ではボルネオオランウータンなどボルネオ島にルーツを持つ動物を飼育しています。動物園での域外保全はもちろんのこと、生息地における域内保全にも貢献するために展開しているプロジェクトに関する会議でした。普及啓発活動や現地での取組みを進めるための資金調達について話し合いました。
2023年2月
【オランウータン計画推進会議】
名古屋市東山動物園で開催されたこの会議では、オランウータンの繁殖計画等の事業報告と事業計画について話し合いました。会議後は建設中の新しいオランウータン舎を見学しました。ため息が出るほど立派な施設です。
2023年2月
【アマミトゲネズミ輸送】
アマミトゲネズミは名前のとおり奄美大島に生息するネズミの仲間です。生息域が限られていることもあり数が少ない貴重な生き物です。私たち日本動物園水族館協会に加盟する動物園が、環境省と連携して保全活動に取り組んでいます。アマミトゲネズミの飼育下繁殖に世界で初めて成功したのは宮崎市フェニックス自然動物園で、優れた飼育技術をお持ちです。国内繁殖計画に基づきフェニックス自然動物園から平川動物公園へアマミトゲネズミを移動させることになったので、飼育担当者と車で受取りに行きました。併せて園内を視察しました。
2023年3月
【京都市動物園 アドベンチャーワールド 天王寺動物園視察】
動物園で仕事をする上で、安全対策は非常に重要です。動物園には危険な動物も数多く飼育されています。来園者、職員、そして動物の安全について考え、確実に実行しなければなりません。京都市動物園では安全対策において優れた取り組みが行われています。例えば、猛獣舎では飼育員用の扉が閉まっていなければ、動物用の扉が開かない電磁ロックが備えられており、危険な動物と飼育員が誤って鉢合わせにならないようになっています。そのようなハード面だけでなく、ソフト面も含め学ばせてもらいました。
和歌山県のアドベンチャーワールドは、ブリーディングローンで借り受けたホッキョクグマのライトを送りだしてくださった園です。お礼と平川での状況報告のために訪問しました。広大な敷地には遊園地が併設されてアミューズメント性の高い施設もある一方、自然を活かし保全に取り組む施設がバランスよく配置されていました。
和歌山から伊丹空港に向かう途中で下車して、大阪市にある天王寺動物園も視察しました。
2023年4月
【九州沖縄ブロック前期園館長会議】
九州・沖縄地区にある動物園と水族館の園長・館長が出席する毎年2回ある会議です。今回の開催担当園は沖縄市にある沖縄こどもの国でした。リニューアル事業が進められており、前回訪れた時にはなかった新たな施設が数多くありました。
会議終了後は名護市にあるネオパークオキナワに足を延ばしました。亜熱帯性の植物が生い茂る緑豊かな動物園です。ハリスホークなどの鳥類が飛翔する「バードパフォーマンスショー」が新たに始まっており、大変な人気を博していました。
2023年5月
【公益社団法人日本動物園水族館協会通常総会】
平川動物公園は公益社団法人日本動物園水族館協会に加盟しており、加盟園館共通の目的のために日ごろから情報交換を行い、互いに支援し合っています。全体の事業計画に基づき役割を分担して様々な事業に取り組みます。事務局は東京にあり、動物園水族館の発展のための事業を推進しています。この日本動物園水族館協会(略称JAZA)では多くの会議や研修会が開催されています。今年の通常総会は宇部市ときわ動物園(山口県)が開催担当でした。JAZAの総裁で在らせられます秋篠宮皇嗣殿下をお迎えしての総会となりました。
宇部市ときわ動物園は「生息環境展示」を特徴としており、動物が暮らす環境をそのまま切り取ってきたかのような展示方法には定評があります。施設見学では樹冠を飛ぶように動き回るテナガザルを目の前にした全国の園館長たちから「おおっ」と感嘆の声があがる一場面もありました。
開催前日には山口県周南市にある徳山動物園を視察しました。リニューアルにより整備されたゾウ舎の立派さには驚くばかりです。その他の施設で特に印象に残ったのは「自然学習館」でした。これは平川動物公園の「どうぶつ学習館」のようなレクチャールーム、市民ボランティア活動拠点、図書コーナー、休憩スペースの機能に加え、バードケージとレッサーパンダ展示場を併せ持った施設でした。リニューアルは進行中なので、これからがさらに楽しみな動物園でした。
2023年7月
【JAZA生物多様性委員会霊長類作業部会】
霊長類(サルの仲間)の繁殖計画等の事業計画、事業報告、その他さまざまな課題について協議する会議です。私は霊長類作業部会の構成員として出席しました。会議前に多摩動物公園、会議後は恩賜上野動物園を見学しました。前職で担当していて、その後引っ越したシロテテナガザルのテテ、チンパンジーのサクラ、さらには10月に平川に来園する予定のボルネオオランウータンの「ひな」に多摩動物公園では会うことができました。上野動物園ではジャイアントパンダの人気ぶりを再認識しました。
2023年9月
【チンパンジー計画推進会議】
チンパンジーの繁殖計画等の事業計画、事業報告、その他さまざまな課題について協議する会議です。今回の開催園は仙台市八木山動物公園でした。リニューアル計画がこれから始まるということで、希望と勢いを大いに感じました。会議終了後は盛岡に足を延ばして盛岡市動物公園を視察しました。しばらく休園してのリニューアルが終わったばかりの園です。地元の野生動物が自然を活かしつつ展示しされている様子が参考になりました。
2023年10月
【種保存会議】
2年に1回行われるこの会議は、大阪市の天王寺動物園が開催担当でした。有蹄類、海獣類、ペンギン類…等、飼育下個体群をいかに維持・管理していくか話し合われ、事例報告等もありました。環境省や経産省などの国の省庁、JAZAと連携する世界各地の地域動物園水族館協会の方々も参加され、国際色豊かな会議でした。アラブ首長国連邦からはアル・アイン動物園の皆様が参加され、プレゼンがありました。
2023年11月
【九州沖縄ブロック後期園館長会議】
今回の開催担当館は長崎市にある長崎ペンギン水族館でした。会議終了後は長崎ペンギン水族館を視察しました。前回訪れたのは7年前で、ビオトープの植物が立派に定着・生長しているのが印象に残りました。水中ポンプを用いた水中給餌器に群がるペンギンたちは、水流に乗った餌の魚を追いかけ、いきいきとしていました。
会議終了後は長崎バイオパークに足を延ばしました。平川動物公園と同じく近藤典生先生が基本構想を作成された園で、キツネザルの島などは雰囲気が似ています。平川にいるカバの龍馬の母親、モモに会うことができました。
のびのびとビーチで行動するフンボルトペンギンたち(長崎ペンギン水族館)
2023年11月
【アマミノクロウサギに関する普及啓発イベント】
平川動物公園では28年ぶりとなるアマミノクロウサギの展示が9月から始まりました。現在3頭のアマミノクロウサギを飼育していますが、いずれも奄美大島と徳之島の地元自治体・動物病院、環境省をはじめとする多くの方々のご理解とご協力によって平川動物公園にやってきたアマミノクロウサギたちです。
奄美大島の皆様に平川動物公園でくらすアマミノクロウサギの現状をお伝えするとともに、平川動物公園の概要や動物園の役割について知っていただくためのイベントを実施しました。会場は奄美市立奄美博物館です。博物館の皆様にはイベント開催にあたり、当日までの準備や広報も含めて本当にお世話になりました。
イベント終了後は奄美博物館の学芸員の方の案内で野生のアマミノクロウサギを観察に行きました。予想以上にたくさん(20頭以上!)のクロウサギたちに出会うことができました。本当に貴重な経験でした。
2023年11月
【ゾウ会議】
今年は名古屋市で開催されました。この会議ではゾウの疾病や繁殖についても議題となりますが、元々はゾウの飼育者の安全対策・事故防止について話し合う場としてスタートしています。開催担当園の東山動物園では2例目となる仔ゾウが生まれ、大変な人気者となっていました。会議と見学を通して、ゾウたちの飼育環境の向上について参考となる情報が数多く得られました。
1年を振り返ってみると、全国各地を訪問して本当に多くの動物たちと関係者の皆様に会うことができました。これらの経験を通して動物を健康で安全に飼育して次の世代を残すこと、そして動物と動物園に関する正しい知識をいかにお伝えするか、について考える機会が得られたと感じてます。本当にありがたいことです。
今後はこれらのことを日頃の業務に活かしていきたいと考えています。
園長 福守