徳之島に行ってきました

1月末に平川動物公園主催の普及啓発イベントを徳之島町で開催するために、徳之島へ行ってきました。

まずはこのようなイベントを計画した経緯についてお話ししようと思います。

去年の9月からアマミノクロウサギの展示を始めました。国内唯一の展示で、平川動物公園としては28年ぶりの展示となります。現在飼育している3頭のアマミノクロウサギは奄美大島、徳之島で交通事故などにより傷を負い、奄美大島の動物病院で初期の治療を施した後、平川動物公園へ移送されました。彼らは今後も継続的な治療が必要なので、野生復帰が難しい状況にあります。そのため、園内で展示する方向で手続き・調整を進めてまいりました。

展示中のアマミノクロウサギ「テツコ」

アマミノクロウサギは奄美大島と徳之島だけに生息し、特別天然記念物に指定されている貴重な生き物です。環境省沖縄奄美自然環境事務所は「アマミノクロウサギの諸病保護個体の取扱方針」を定めており、その中には動物園等で公開展示する上での指針が示されています。その中には

・公開展示する場合には、生息地のある地元自治体や住民に事前に周知する

・生息域内保全を推進するためのより効果的な普及啓発のために、地元自治体・民間団体等と連携した様々な取り組みをする。

とあります。

アマミノクロウサギを平川動物公園で公開展示する前にはその旨を地元自治体の関係部署にお伝えしました。さらには地元自治体、地元の自然保護活動に取り組む団体と協力して「動物園が取り組む野生生物保全」、「アマミノクロウサギの保全活動」についての普及啓発イベントを計画しました。

1回目は昨年11月に奄美市立奄美博物館の協力を得て奄美大島で、2回目は徳之島町の協力を得て1月末に徳之島で同様のイベントを開催することになりました。

イベントのご案内

私は奄美大島には行ったことがあったのですが、徳之島に行くのは初めてのことでした。「闘牛の島」「アマミノクロウサギがすむ島」という知識と「南国だから暖かいだろうなぁ」というイメージぐらいしか持ち合わせず、徳之島に到着しました。

空港ではさっそくクロウサギがお出迎え?

島に到着してみると予想していたより寒く感じました。レンタカー屋さんのスタッフの方によると、

「冬は風が強い日が多いから、気温の割には寒く感じるかも…」

とのことでした。海には風を遮るものがないからなのでしょう。さらに夜には雨が降ってきました。そんな中、野生動物を観察するエコツアーに参加しました。

冷たい雨の降る満月の夜だったので、野生動物を観察するには良くない条件でした。しかし、運のいいことにアマミノクロウサギ、ヒメハブ、イボイモリに出会うことができました。

林道に出てきたヒメハブ
アマミノクロウサギの糞

奄美大島で観察したアマミノクロウサギは、すぐ近くで草を食べ続けるほどの大らかさでしたが、徳之島では数秒で姿が見えなくなったので写真を撮る間もありませんでした。

糞、食痕、掘った穴を見てアマミノクロウサギのくらしを感じることができました。

こちらは明るくなってから撮影
クロウサギが掘った穴?

奄美大島と同様に、徳之島でもロードキル(野生動物の交通事故死)が問題となっていました。

注意喚起の表示と飛びだし防止のネット

交通事故の件数(天城町役場)

普及啓発イベントは、徳之島町生涯学習センターの1室をお借りして開催しました。

動物園からは私も含めて2名で動物園での保全への取り組みついてお話しし、徳之島で自然保護活動を行っている団体、「徳之島虹の会」の美延さんには「アマミノクロウサギを守ること」のテーマで講演していただきました。2016年に徳之島の母間集落で事故に遭い、平川動物公園へ移送されたアマミノクロウサギ「ボマ」の島での様子や移送の経緯などをお聞きすることができました。

どの程度の人数の方に集まっていただけるのか、イベントが始まるまで不安でしたが、地元各自治体や徳之島虹の会の皆様のおかげで用意していただいた会場は満席となりました。ありがたいことです。

徳之島虹の会 美延さんの講演

会場となった徳之島町生涯学習センターには郷土資料が展示されており、島の文化、歴史、自然について学ぶことができます。

徳之島町生涯学習センターの郷土資料

今回、初めて徳之島を訪問して、短い間でしたが豊かな自然、独自の文化・風土を感じることができました。闘牛の島ということもあって、立派な体格のウシを間近で見る機会があり、家族ぐるみでウシを大切にする様子が見られて感銘を受けました。飼い主の方に声をかけると、気さくに、優しく、そして誇りを持って自分のウシについて語ってくださいます。

皆さまも機会をつくって徳之島に足を運んでみてはいかがでしょうか?

園長 福守

空港のすぐ近くで出会ったウシ

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