皆さん、こんにちは!
フライングケージ、世界のツルゾーン担当の日高です。
2024年初めてのブログは、タイトルにもある通り、昨年12月14日に16歳で死亡したシセンレッサーパンダ「風美」のことについてです。
思い出がたくさんありすぎて、ブログに一回で収めようとすると非常に長くなりそうなので、今だから話せる話なども含めて数回に分けて風美とのエピソードを書いていこうと思います。
全部で何回になるか分かりませんがお付き合いいただき、「風美」というレッサーパンダがいたことを時折思い出していただければ幸いです。
併せまして、風美へ沢山のお花やメッセージをいただきました。
この場を借りてお礼申し上げます。
風美の死亡についてはこちらをご覧ください→【レッサーパンダの死亡について – 平川動物公園公式サイト (hirakawazoo.jp)】
その日は突然やってきました。
とても個人的なことですが、風美が死亡する2日前から手術のため入院していた私は、入院先の病院で「先ほど風美が死亡しました」と連絡を受けました。
年齢を重ねてからの日々はある程度そういうことも覚悟していましたが、体調を崩していたわけでもなかったのでそれはあまりに突然のことで、悲しいという感情よりもただただ茫然としていたように記憶しています。
不思議とその時は全く涙も出ず、すぐに現担当者に今後の事務手続きや解剖について連絡していました。
悲しさはその後じわじわとやってきました。病室で泣いていると手術の痛みで泣いていると勘違いされ、看護師の方から「どうしました!?大丈夫ですか?鎮痛剤を出しましょうか?」と言われたのも今となっては笑い話です。
風美の飼育担当として2018年から5年間一緒に過ごしてきました。
限りある施設・医療設備・予算等の中で、当時の自分に出来ることはほとんどやった!というくらい後悔はほとんどない(実際のところ風美はどう思ってくれていたかは分かりません…。)のですが、唯一の後悔は、最後の最後に立ち会えなかったことでしょうか。
本当に突然で最後に会うことも出来なかったので、私の中ではずっと元気なままの風美の姿が心に残っています。
みなさんの中にいる「風美」はどんな姿でしょうか?
きっとどの姿も見ている人の笑みがこぼれ、穏やかで優しい気持ちにさせてくれるような表情をしていると思います。
風美との出会いは2018年。
これまでに3頭(瞬瞬♂との仔:瞬平♂、スバル♂との仔:キラ♂ソラ♀)を育て上げ、子どもたちは繁殖のため他園へ移動し、風美の年齢や体調を考慮して繁殖は引退した頃でした。
出会った頃の印象は「年齢の割に老けている、毛並みが悪い、食事の時間以外は寝てばかりで活気がなく表情が暗い」というお世辞にも良い状態とは言えない印象でした。
どうにかこの状態を改善したいと思い、自分の中で以下の3つの目標を立てていました。
①せめて飼育下の平均寿命までは迎えたい。(今だから話せますが、当時の状態ではこの子はあと5年も生きられるのだろうか?と思っていました…。)
②毛並みを少しでも改善したい。
③心身ともに健康で楽しく過ごせるようにしたい。
(長く担当できたとしても5年くらいかなぁと予想していたので)今思えば、風美が老いてからのことばかり考えていたし、担当でいられるうちになるべく風美のためにできることを増やそう!そのためには…。と、やることが盛り沢山の凝縮された日々で自分自身とても生き急いでいたような気がします。
何をどのようにどういう順番で取り組んでいくか・改善していくか・老いに備えていくか?というような風美の飼育プランのようなものを担当になってすぐに考えていたことを思い出しました。
前職(他園)でもレッサーパンダの飼育に関わっていたこともあり、風美と同年齢、それから風美より高齢のレッサーパンダたちを見ていたので、その経験から比較してもあまり良くない印象から風美との関係が始まりました。
しかし、風美の物怖じせずフレンドリーな性格に助けられたこともありました。
それは当時、春と秋のイベント期間に「お食事ライブ」という動物の食事の時間を解説する15分ほどのイベントでのことです。
(レッサーパンダでは食事の様子をご覧いただきながら、食性や体のつくり・特徴について解説していました。)
春はまだ入ったばかりの新人で、レッサーパンダたちと何の関係も築けていない頃でした。
来園者の方には新人ということは一切関係のないことなので、きちんと解説イベントらしいイベントができるかは担当者の頑張りはもちろんですが、風美の性格だけが頼みの綱でした。
風美にはお食事ライブだけでなく様々な場面で本当にたくさん協力してもらいましたし、助けてもらいました。
当時のスバルは現在よりも非常に繊細で慎重派でしたので、大事な時には絶対風美!困ったときの風美様様!でした。(これは歴代のレッサーパンダ担当者もきっとそう思っているでしょう。)
そういえば、前任の担当者からの引継ぎには「風美は相手(飼育員)の態度や雰囲気によって出方が変わる」というようなことが書いてありました。
このことはその後の付き合いの中でも非常に実感したことでしたが、まずは良い関係を築けるようにどんなに忙しい時でもレッサーパンダ舎、各寝室、トレーニング時など、風美も含めレッサーパンダたちと接する空間に入る前は一呼吸おいて穏やかに大らかに接したり声を掛けたりするように特に心がけていました。
約1か月半ぶりの職場復帰。体力・筋力の低下が尋常じゃないと感じたフライングケージ、世界のツルゾーン担当 日高