みなさん、こんにちは!
ヨシミのことについて、前回のブログ【ヨシミのこと~来園編 – 平川動物公園公式サイト】の続編を書いています。
さて、皆さんもお待ちかね⁉の顔合わせ・同居編です!検疫を終えて当園の環境にも徐々に慣れ、シュート(動物用の移動通路)と寝室への移動もスムーズに出来るようになってきたので、群れのメンバーとの顔わせを1月の上旬から少しずつ始めました。
チンパンジーはとても力が強く立派な犬歯や硬い爪を持っているので、少しの接触でも大きな怪我につながる恐れがあります。(万が一の事態に備えて、同居時はスタッフも毎回複数人で対応します)
ますは網越しの顔合わせから始め、その時の様子をみて同居に踏み切るか、顔合わせを継続した方が良いかを判断しました。
顔合わせはヨシミと顔合わせ対象の個体の寝室を隣同士にし、寝室と寝室の間にある仕切り扉に目の細かい網を張り、互いに姿は見えるが、直接の接触は出来ない状態で様子を見ます。
チンパンジーには親和的な行動指標がいくつかあるので、顔合わせ時にそのような行動が見られるかを観察します。

同居の順番は♀ピータン→♂ケイ→♂イチロー→♀イチエ・ライチ→♀モモ・カリンバの順で行いました。
顔合わせ・同居にあたりチンパンジー飼育関係者で事前に話し合った結果、セオリー通りに進めるなら、通常はαオスと新規個体を最初に顔合わせ・同居をすることでαオスを新規個体の味方につけ、他のメンバーからの攻撃などからも守ってもらえるようにした方が良いだろうとのことでした。また、αオスと新規個体が一緒にいるのを先住メンバーに見せることで、αオスが新規個体を認めたなら仕方ないか…と思わせることも出来るだろうという見立てです。
当園では先代のαオスのラルゴが死亡してから半ば強制的⁉にケイがαオス(形式上)になりました。
αオスは群れの中のリーダー的存在で、体が大きかったり力が強いだけではダメなのです。群れ内での揉め事の仲裁に入ったり、皆から慕われ、どのメンバーにも気が遣えることが大事です。
ケイは確かに体も大きく、力も強いのですが、これまで揉め事の仲裁に入ることはほとんどなく、仲裁どころか火に油を注いだり、もしも奇跡的に?仲裁に入ることがあればその日の日誌には特記事項のような出来事として書かれていました(^^;そして皆から慕われているかといえばそうでもなく、群れのメンバーもケイへの挨拶を適当に済ませることもしばしば…。
私たちスタッフも、自信をもって「ケイがαオスです!」と言えない感じがありました。
セオリー通りにいくなら最初はケイと合わせた方が良いかもしれませんが、ケイにはαオスとしての動きがあまり期待できないよね…と関係者の中ではこんなことも言っていました。(この時は今後のケイがまさかあんな風になるなんて知らずに・・・)
年齢の近いピータンと友達になってもらうのも一つの手かもしれないということで、上記の順番での顔合わせ・同居となりました。また、ピータンはイチエ・モモの幼馴染コンビの仲の良さからしばしば浮いてしまうこともあり、ポツンと1頭で過ごす時間も多々あったのでヨシミと仲良くなることができればその部分も解消出来るのでは?思っていました。
【ピータンとの顔合わせ・同居】
・初回は網越しで互いに歩み寄る感じが見られず、ピータンがヨシミに水をかけたのをきっかけに、激しさはないものの互いに水をかけあい終了。
・2回目は目立った進展がなかったので、きっかけづくりに仕切り扉を5cm開放し、互いに触ろうと思えば手が触れる状態にしました。どさくさにまぎれて手が触れる状況もありましたが、互いにまだ相手を疑いつつも、少しは仲良くしたいかも…といった雰囲気。
・3回目はケイとヨシミの同居を別の部屋から見ていたピータンの反応が良かったため、ケイ・ヨシミに合流する形で初同居!
この時互いに親和的な行動を見せ、かなり良い雰囲気で過ごせていましたが、ここでケイのディスプレイにピータンが巻き込まれ軽傷を負うことに…。
この後、仕切り直してケイを除いて、ヨシミ・ピータンで再度同居するもケイがいないと雰囲気あまり良くないかも…⁉
途中多少の喧嘩もありましたが、仲直り行動も見られていたので安心していたところ、ピータンがヨシミに攻撃し、軽傷を負うことに…。
⇒仲直り行動も見られるのでケイがいれば問題なさそうな組み合わせであることが分かりました。

【ケイとの顔合わせ・同居】
・初回の網越しの状態で互いにかなり反応が良く、親和的行動も多く見られたため開始後わずか2分で仕切り扉を開放し、同居となりました!
終始良い雰囲気でヨシミもかなり落ち着いており、互いに離れたくなさそうでした(*^^*)


【イチローとの顔わせ・同居】
ケイとヨシミの同居が順調であることから、イチローとの顔合わせ・同居はケイを介して進めた方が互いにとってケイという安心できる存在がいるので上手くいのではないかと思い…
・序盤はケイ・イチローのいる部屋の隣にヨシミという配置で、網越しでの反応を見てみると、イチローは最初こそスクリーム(強い感情を表す叫び声のこと。この時は怖くて叫んでいます)していましたが次第に落ち着きました。
特に攻撃的な様子もなければ親和的な行動も見られません。ここで仕切り扉を5cm開放したところ、ヨシミがケイ・イチローの方に行きたそうに仕切り扉をこじ開けようとするため、ケイがヨシミを守ってくれたらいいな…と望みを託して、同居に踏み切りました。
同居した瞬間、ケイがヨシミのことを守るようにイチローとの間に割って入りました!!!この行動は同居中終始観察されました。(ケイ、かっこいいぞ~!!!と同居が終わってから沢山褒めてあげました。)
ヨシミもイチローに対して親和的な行動が沢山見られました。
イチローもケイがいると心強いのか、ケイを盾にしてヨシミに少しずつ近付き、触れていきます。そして親和的な行動も見せ始めました。初めてにしては上出来です。
(思えば、イチロー、ライチ、カリンバは生まれてから他園のチンパンジーが来園する機会がなかったので、最初はとても怖かっただろうと思います。)
終始いい雰囲気で同居にも慣れてきた頃、イチローがヨシミの気を引きたいけれど仲良くする方法が分からず、いつもの調子で寝室内に張ってある消防ホースをヨシミの顔の前でユラユラとしつこく揺らし始めました。
最初は黙って見ていたヨシミもあまりのしつこさについに堪忍袋の緒が切れ(いつも落ち着いているヨシミがキレたのを初めてみました)、イチローに制裁的な感じで飛びつきました。
イチローとヨシミがもみくちゃになりそうで「まずい、喧嘩になる!」と思ったその瞬間、ケイがすかさず仲裁に入りました!咄嗟の判断・行動に脱帽でした。
あまりに完璧な振る舞いに本当に今までのケイか?と思ってしまいました。(関係者全員思っていたと思います)
⇒ケイがいれば問題なさそうな組み合わせであることが分かりました。
ピータン、イチローとヨシミの組み合わせはケイがいれば大丈夫であることが分かったので、1月下旬からまずはバックヤード(非公開の屋外運動場)で1日過ごす練習を始めました。
来園して以来初めての屋外なので、気分もリフレッシュ出来るのか?ヨシミの表情も一段と良かった印象です。
ヨシミにとっては初めてのバックヤード(屋外)ですが、移動も割とスムーズに出来ました。
まずは安定感のあるケイとの組み合わせでバックヤードに慣れてもらいます。
というのも、当園の屋外運動場には高いタワーがあるのですが、これまで過ごしてきた日本平動物園とは環境の異なる運動場です。
来園して以来、ヨシミの行動を見ていると随分と運動能力が弱そうだなぁという印象だったので、いきなり屋外運動場に出ても、高所に上がることも下りることも難しいだろう…最悪の場合、落下の危険性もあるなぁ…と関係者の心配はその一点に集中していました。
そこで、まずは屋外よりは高さがやや低いバックヤードで過ごすことで、運動機能の向上を狙いました。仲間と一緒に過ごすことで、単独で過ごしていた時よりも多く運動することも予想できます。
1月下旬にケイ・ヨシミ・イチローorピータンの組み合わせから始め、最終的には4頭でバックヤードで1日落ちついて過ごせるようになりました。
日を追うごとに、互いにグルーミングや挨拶行動が増えているのを見て、ヨシミが群れの一員として認められながら過ごせている実感が湧いてきました。
そして群れのメンバーが徐々にケイを慕い、尊敬しているような行動も見られ始めました。ケイの表情もどこかキリっとして眼光も鋭くなったように思います。
この頃から顔合わせ・同居の度に、チンパンジー飼育関係者の口癖は「ケイがいるから大丈夫!!!」となったのでした。

だいぶ長くなったので、イチエ・ライチ親子、モモ・カリンバ親子との顔合わせ・同居については次回に続く…
まさか「ケイがいるから大丈夫」なんて言葉を言うなんて思ってもみなかった チンパンジー担当:日髙
