みなさんこんにちは!平川動物ウォッチング隊員の落合です。今回のズーブログでは、前回紹介した新コアラ館のリニューアルのお話の続き~建設開始からオープンまで~を紹介したいと思います。
前回のお話は→ こちら
更地になった旧屋外展示場跡に、大まかな建物の位置が線引きされ、基礎工事がはじまりました。鉄筋コンクリートの建物ですので、コンクリートを打設する作業が連日続きました。
まだまだ建物の全貌が見えませんでしたが、細かい打ち合わせは工程会議やメールで常に行っていました。例えば水栓やコンセントの位置、コアラが暮らす組木の配置などなど、各専門業者と調整作業を連日行っていました。動物を飼育する上で最も気を遣うのは、ケガや事故につながる配置になっていないかを検討することでした。ちょっとした突起や隙間でも、爪をかけて登ったり、挟まったりすることがあります。歴代のコアラ担当者の意見を聞いたり、飼育しているコアラの行動を今一度観察し検討していきました。
特に気をつかったのが、組木の配置です。観覧通路から近すぎると、ジャンプして飛び移る可能性もあります。しかし遠すぎるとコアラとの距離が離れてしまい、観察しにくくなり、スペースを有効活用できません。そこで絶対に飛び移れない距離で、コアラも落ち着いて過ごすことができる基準の距離を設定しました。これをもとに組木の配置を決定し、専用の基礎を施設内に設置しました。
それと施設中央にある2本の柱を隠すための、擬木の形状にもこだわりました。地面から登れるような形状にすると、フェンスが手の届くところにあるため、簡単に脱走してしまいます。そこで先端部分のみ爪が引っかかる形状にし、途中の表面は滑らかにし、コアラが登れないようにしました。組木から横木を橋のように渡し、観覧者の頭上で休んでいる様子を観察できるようにしています。休むための横枝の角度は、実際にコアラが休んでいる組木の角度を計測し決定しました。こちらの擬木の運用は、もう少ししてから、段階的に試していきたいと思いますので、お楽しみに待っていてください。
さて、工期終盤には施設の外壁やガラスなども取り付けられ、ずいぶんイメージがわいてくるようになりました。いよいよラストスパートです。床や壁面の色を最終決定し、組木や移植用ユーカリの設置にも取り掛かりました。組木用のクヌギは、生えている場所に出向き、適した形状のものを担当者が選んで運び込みました。60本以上の木を高圧洗浄機で表面を洗浄し、チェーンソーでカットする作業が連日続きました。
それ以外にも個体紹介パネルや既存施設に設置するパネルの作成など、パソコンに向かうデスクワークも並行して進めていきました。
そして一番肝心で心配していたのが、コアラの移動です。コアラが施設を気に入ってくれないと意味がありません。なにより新居に引っ越しても、慣れるまで時間がかかります。最低でも10日から2週間は必要と想定していたので、オープンの日より逆算し、日程を調整しました。また移動させるコアラの選定も必要です。非常に悩みましたが、個体の性格や性別、今後の繁殖計画などをもとに、部屋割りを決めていきました。新施設には、オスのブンダ(我が道を行く性格です)、ヒマワリとキボウ(若くて好奇心が旺盛)、ユイとレイ(気の合う2頭で同室展示を継続)、イト(落ちついたのんびりとした性格)の6頭を移動候補とし、イベント広場にはオスのバンブラを配置することにしました。
移動当初は、さすがにそわそわしていましたが、その日のうちからユーカリも食べはじめ、徐々に環境の変化にも慣れていきました。今では普段の暮らしぶり(ゆっくり休んだり、ユーカリを食べたり)を来園者の皆様の前で披露しています。
今後はこの新コアラ館から、コアラの生きざまをもっと皆様に情報発信していければと考えています。赤ちゃんも誕生するでしょうし、本能のままに鳴いたり、地面をあるくオスの様子、飼育担当者とコアラの関係など、日本で一番、コアラを感じることができる施設として、さまざまなことに取り組んでいきたいと思いますので、何度でも足を運んで、ゆっくりとコアラを感じていただければと思います。